【看護師の転職】総合病院から精神科病院に転職して感じる転職のデメリット

看護

 私は総合病院から精神科病院に転職した田舎暮らしの男性看護師です。私についての詳細はプロフィールをご参照下さい。私が精神科病院に転職してもうすぐ1年となりますが、これまでの働き方と比べて大きく変わった部分があります。今回は、看護師の精神科病院へ転職するデメリットをお伝えしていきたいと思います。私が現在感じている「総合病院から精神科病院に転職して感じる転職のメリット」についても前回の投稿で紹介しているので、良ければ読んでみて下さいね。

収入面での不安・経営の不安

 中小病院や施設においては、総合病院ではあまり聞かれない収入や経営に関するネガティブな情報が非常に多く耳に入ってきます。そういった時には「ここで働いていて本当に大丈夫だろうか」と感じることも少なくありません。

「入院患者数が減ったことで昨年より○割収入が減った」「コロナ対策の物品にこれ以上回す費用がない」「このままだとボーナスも減らさざるを得ない」など、以前は聞いたことが無かったネガティブなニュースが頻繁に聞こえてきます。規模の小さい病院ですので、その分そういった情報が回るスピードも速く、加えてデマ情報であることも少ないというのが困った点です。

 また、私が在職する病院で言えば労働組合が無く、給料面で不透明な部分も多いです。私が労働組合のある病院に勤務していた時は「組合費を払うのはもったいない。どうにかして組合から外れられないか」と考えたものですが、いざ組合の無い病院に転職すると給料や業務の面で公平性を維持するのに非常に助けられていたと感じます。現在の職場では給料明細を確認すると良く分からない「手当」や「臨時助成金」のような欄があり、経験年数や過去の実績によってもどういったものが支給されているかは人それぞれ異なっていてよく分かりません。その内容を具体的に把握しているのは事務部門のみであり、「あの人は○○手当が出ているのに私にはなぜ無いのか?」と尋ねても「入職の際に質問も○○手当の希望も無かったでしょ?この条件で同意しているんだから後から追加することはできない」とのこと…。恐らくその時点での経営状況や新規採用者の数等によっても調整されているのだと思いますが、後から知ると自分の給料に不満や疑問は少なからず感じます。労働組合があれば公平性を保てるよう給料面にも申し入れがされていたと思いますが、以前から今のような体制であったのに新たに転職してきた一社員が申し入れするのは非常にハードルが高いと言わざるを得ません。

仕事以外での時間を浪費してしまう可能性が上がる

 精神科病院は総合病院と違い、概ね定時で勤務を終えることが出来ます。以前はたくさんあった時間外勤務や自宅に持ち帰らざるを得なかった仕事が大幅に少なくなり、プライベートな時間を充実させることができます。総合病院では疾患や検査、手術内容などの、看護業務を行う上で必要となる知識を身に付けるあって当たり前だった多大な「自己研鑽」の時間も、精神科においては業務時間内で学習する事もできるためプライベートの時間をほとんど削らずに済んでいる様に感じます。しかし、せっかくの貴重な時間も「あって当たり前」になってしまうとダラダラと無駄に過ごしてしまい、あっという間に1日が過ぎてしまいます。

 せっかく多忙な業務を離れ、仕事とプライベートを両立できる環境に身を置くことができても、新たに確保できた時間を無駄に浪費してしまうのはあまりにももったいないです。しかし以前は限られた時間を有効活用しようと頭をひねっていたのに、そういった生活が習慣となってしまうと、ただ無為に過ごすことが当たり前になってしまいます。家族と一緒に過ごす、運動で汗を流す、副業を始めるなど、なんでもいいので、まずは自分がやりたかったことや今までやれていなかったこと等を見直し、早い段階で新たにできた隙間時間を活用してみましょう。意外と、プライベートの時間も充実し、ダラダラ過ごすことなくアクティブに過ごすことができることに気付くのではないでしょうか。

ジェネラリストとしての成長の停滞

 当たり前ですが、精神科病院においてはほとんどの場合手術はありません。特殊な検査も少ないですし、新しい薬に対する勉強会なども大学病院などの最新の治療を積極的に取り入れている場所とは比べ物にならないほど少ないです。従って、総合病院で常にアップグレードしてきた知識や看護技術は、そのほとんどが不要なものになってしまいます。もちろん、それまでの経験や知識は日々の業務で活用される場面も多いのですが、これから更にアップグレードしていくのはかなり難しいと言えるでしょう。その理由は、精神科に特化した病院での勤務であり、それらの新しい技術や知識を学ぶ場も実践する場も、より具体的に教えてくれる先輩看護師や医師もいないためです。この点は、私も転職する際に一番ネックになった部分であり、現在でも不安を感じるところです。

 一度精神科病院での業務の動きに慣れてしまうと、時間の流れや空気感の違いもあり、また総合病院に戻る、という選択をするのは非常に勇気がいるものになります。精神科に慣れきってしまった状態で総合病院に転職した人からは

「煩雑になりがちな業務で、一度経験しているから大丈夫だと思っていたが全然ついていけない」

「知識として忘れてしまった部分は多いが看護師としての経験年数だけは経ってしまい、ダメな転職者、ダメな先輩と思われないか不安だ」

「以前経験した科なのに、知らない治療や手術が増えすぎていて全く分からない」

など、実際に聞こえてくる声の多くは総合病院に転職したことでつらい気持ちになっているというものが多く、ジェネラリストとして看護師のキャリアを積むことは難しくなると言わざるをえません。精神科病院で働くということはどういうキャリアを積むことになるのか、自分はどういったキャリアを積んでいきたいのか、しっかりと考えた上で精神科に特化して学んでいくんだというぶれない心の軸を持つことが必要となるでしょう。

転職者が多い

 精神科病院では転職者が多い様に感じます。まず精神科では特殊な検査や手術を行うことは少なく、新たに学習する内容が少なくて済むので精神科未経験者でも比較的参入しやすいと思います。また、総合病院での多忙さや人間関係に疲弊してしまった人が落ち着いて仕事ができる環境を目指して転職してくる例も多いです。

 一方で、比較的短期間でまた他の病院へ出て行ってしまう人も少なくありません。これは、時間を持て余してしまい物足りないと感じてしまったり、給料面での不満などが理由としては多いようです。また、総合病院ではせっかくさまざまな教育制度を設けて一人前に育てた看護師が出て行ってしまうことをもったいないと感じ、異動や日勤のみの業務にするなどあれやこれや手法を変えて簡単には転職してしまわないようなアプローチをしてくることが多いですが、精神科ではそのようなアプローチも少ないように感じます。そこはやはり人材育成の面において総合病院ほどの困難さが無いことや、また転入者が来ることが分かっているためだと思いますが、そのように点々としていては、自分のキャリアとして実りのあるものにはなりませんし、履歴書が短期間での転職履歴でいっぱいになっていては採用担当者の印象も良くはならないでしょう。昨今は昔ほど転職自体にマイナスイメージをもたれなくなっていますが、それでも程度というものがあります。腰を据えて今の職場での働き方としっかり向き合うべきだと思います。

 また、転職者が多いことで人間関係も比較的希薄になりがちだと感じます。私のことで言えば、以前は仲の良いメンバーでの集まりや病棟全体での飲み会等も頻繁にありましたが、現在は退職者や新採用者がいる時のみといった感じでほとんどありません。病棟内に必ず1年以内に数名の中途採用者がいますが、仲良くなって仕事以外で連絡を取るということも今はほとんどありません。恐らく多くの総合病院経験者にしてみればやや疎遠というか、落ち着かない距離感を感じるのではないかと思います。しかし、仕事とプライベートをしっかり分けたいといったサバサバした関係性を望む人にはちょうど良いのかもしれません。

不透明な医療として虐待等を疑われる可能性がある

 ニュース等で精神科病院や介護施設において、認知症患者への虐待で逮捕される看護・介護職員を一度は見たことがあるのではないでしょうか?精神科病院にはせん妄や不穏、状況理解ができないといった患者による暴言・暴力などが頻繁に見られるため、安全な療養環境を保持するために医師の判断のもと、拘束や隔離処置を行います。そういった対応をとる際に、職員側にも危険が無いよう人数をかけて抑え込むことがありますし、精神的に落ち着くまでは隔離・拘束対応をとります。これらの対応に対し職員側の虐待や暴力を疑われることがあります。

 医療現場においてはどこでも起こりうるものですが、精神科では特に疑われるケースが多いことは想像できるでしょう。ニュース等によるイメージが先行し、必要性があっての対応であるにも関わらず、それを目にした患者さんや家族から虐待の疑いをかけられることは職員側としては大変不本意ではありますが実際にそう思われてしまうのは職員側としては止めようがなく、誠実な対応によってそれらによる不信感を解消していくしかなく、お互いの信頼関係によって理解を得ていく以外の手段がありません。また、どんなに非難や罵倒を受けても医療者側はグッと耐えるほかありません。この点については理不尽だと感じる部分でもあり、これによって医療者側が病んでしまうこともあります。

 まずはしっかりと自分の身の潔白を記録に残しましょう。また、自分ひとりで対応しようとすると問題がこじれてしまうことがあるので、早めに上司や同僚に相談し、対応を一緒に考えてもらうか、説明の場に一緒に入ってもらいましょう。

 いかがでしたか?以上が、現在私が考える総合病院から精神科病院へ転職して感じるデメリットです。やはり様々な理由で転職することはあると思いますが、転職してからそれまで見えていなかった転職のデメリットに直面し「こんなはずではなかった」と後悔してしまう方もいると思います。転職を考えている人は、少しでも多く一般的な情報ではない生の情報を集めていくことで転職後に感じるギャップを緩和することに繋がるでしょう。私自身ももっと経験を積んだり、役職が付いたりするようになってくると視点が変わって、転職において感じるメリット・デメリットにも変化があるかもしれません。機会があればまたご紹介致します。

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